里山学覚書

森林科の学生の自学メモ

諸行無常なエネルギー問題

大学生になってから、「諸行無常という言葉は、本当に本質的なことを表しているのだな」と感じることがたまにある。

何だお前宗教にでもハマったのか、と心配されるかもしれないが、決してそうではない。

そういうスピリチュアルなところではなくて、むしろ、もっと現実的なところでそれを感じるのだ。

 

例えば、卵の値段

 

高校生までは、卵の値段なんて気にしたことがなかったのだが、大学生になって一人暮らしを始めると、日常的にスーパーで卵を買うようになり(もっぱらTKGのためだったが)、嫌でも物の値段に対して敏感にならざるを得なくなった。仕送りないし。

そうして2年間スーパーに通い続けるうちに、やがて卵や牛乳、肉、野菜といった身近なもののお値段が、想像以上にダイナミックに変動していることを知ることとなった。

 

確かに高くなってる…と呟きつつ、ふと岸田総理の顔が浮かぶが、僕はまだ大学生なので許して欲しい(笑)。

 

卵の価格の上昇は、鳥インフルエンザによる品薄と飼料価格の高騰が原因らしいのだが、飼料価格の上昇の背景にあるのは、米中の経済戦争とウクライナ戦争だという。経済とか世界情勢といったものに疎い僕でも、卵のお値段変化に遠くの戦争の影響を意識せざるを得ない。

 

世界情勢の影響を受けて価格が変化した身近な物の代表例として、ガソリンも挙げられる。親が車をあまり使わなかったので、ガソリン価格には鈍感だった。

「レギュラーガソリンって確か120円くらいだったよな〜」

甘く見ていた。一体いつの記憶だったのだろう。おそらく10年くらい前の値段か(笑)。大学に入って現在のガソリン価格を知った時にはとても驚かされた。レギュラーが160円、ハイオクが180円もしたのである。いや、これでもまだ現在よりは安いのだろう。その後、ガソリンの値段はぐんぐん上がり、今ではレギュラー180円も珍しくない。ここまでガソリンの値段が不安定な物だとは思っていなかった。

社会の根幹とも言えるエネルギー資源の値段が、原油価格や、為替レート、各国の政策といった複雑な要因によって刻一刻と変化していっている。社会というものは、こんなに危なっかしい先の見えないものに身を委ねているのかと考えると、本当に恐ろしい。

 

化石燃料に代わって注目されているものといえば、再生可能エネルギーがあるが、こちらに変えれば万事OKというわけでもない。第一、石油に関わる産業にとっては迷惑な話であるし、自然に依存するという石油とはまた違ったベクトルの不安定性が生じる。

 

バイオマスを燃料とした発電なら、電力は安定して供給できるだろうが、価格が安定するとは限らないし、燃料を供給する農林業でも新たな問題が発生してくるだろう。簡単にいうと、再生可能エネルギーの普及が、自然破壊を引き起こすのではないかという懸念だ。自然に優しいイメージのある再生可能エネルギーが、逆に自然を破壊する、というと不可解に感じるかもしれないが、起こっても全然不思議ではない、というか、もう起こっているといっても過言ではないと思う。

実は、現在国内でバイオマス発電に利用されている燃料の多くは外国から輸入されたものだ。もし、バイオマス発電が世界中で普及していったらどうなるか。バイオマス燃料の増産を目的に広大な森林が切り開かれ農地に変えられてしまう可能性がある。食糧生産との競合も深刻な課題で、先進国の「エコ」で苦しむのは発展途上国の人々なのだろう。「エコ」という「エゴ」も冗談で済まないかもしれない。

国産材を燃料としたバイオマス発電が成功したとしても、不安は尽きない。というのも、本格的に燃料として森林資源を伐り出すようになっても、伐採したところが再造林されるかどうかは怪しいからだ。現在日本の全国的な再造林率は3-4割を推移しており、残りの2/3程度がきりっぱなしになっていることを考えると、国産材利用のバイオマス発電が国土の荒廃を招く可能性も大いにあると思う。バイオマス発電が持続的であれるかどうかは、それ単体では語れない難しさがある。

 

他にも再生可能エネルギーには、メガソーラーの設置に伴う広範囲の森林伐採や、風車へのバードストライクなどの問題が挙げられる。環境に良さそうなもの」が「本当に環境に良いもの」かどうかは、疑ってかかったほうが良さそうである。

 

 

えっと、何の話をしていたんだっけ…💦

 

そうそう、だいぶ脱線してしまったけれど、諸行無常の話であった。

大学生になって、否が応でも社会に触れて、世界は確かに変わりつつあるということを実感するようになってきた。でも、そうなったのは今に始まったことじゃなくて、きっとブッダさんの時代からこの世の本質は変わってないのだろう。

今では、ビジネスパーソンちっくな「VUCA時代」なんて言葉もあるけど、僕としては一言、「諸行無常なのさ」と言いたい(笑)。