里山学覚書

森林科の学生の自学メモ

林学の学問体系

林学とは何なのか。森林科学との違いはあるのか。

その疑問に答えるために、林学の学問体系について調べてみた。

辞典によると

コトバンク検索結果から引用してみる。

改訂新版 世界大百科事典「林学」

森林および林業に関する技術および経済政策についての学問。すなわち森林に関する応用学であって,森林を造成することから始まって,その生産物の利用にまで及ぶ。日本では,1937,38年ごろから森林より収穫したものを利用する技術が進み,これに関係した諸部門が林産学として体系化し,林学から独立するに至った。したがってこれと対応して,森林を育成する部門を狭義の林学とする場合が多い。さらに近年は,森林を育成し経営する部門を林業学,これの基礎となる森林植物,林木遺伝,森林環境,林木生理などを総括して森林学とする方向にある。

林学は技術部門には造林学,森林保護学,森林利用学,砂防工学などがあり,経済部門には林政学,森林経理学,森林経済学などがある。造林学にはさらに関連学として,森林生態学,森林環境学(森林立地学),森林植物学,林木育種学などがある。森林保護学には樹病学,森林動物学,森林昆虫学,森林動物管理学などがある。森林利用学は森林を伐採,集材,運材する木材生産工程の学問であって,森林土木学,森林機械学,林業生産工学を含む。砂防工学には砂防土木学,森林水文学(森林理水学),森林気象学などがある。森林経理学は技術学と経営学の中間的なもので,森林経営計画が主体である。関連学として測樹学,森林航測学,森林会計学などがある。林政学はその範囲が広いが個々に分かれる方向にあり,森林法律学林業経済学,外国林業論(林業地理学),森林風致計画論,緑地学,自然保護論などがある。

 なお林産学の部門には,木材の素材性質重点をおいて利用する面と,木材を化学的に改変して利用する面との学問がある。その内容は木材構造学,木材加工学,木材材質改良学,木材化学,林産製造学などである。

(出典:改訂新版 世界大百科事典「林学」

文字だけで説明されても、よくわからないので、上記をもとにして構造を可視化したのが以下のものである。

===========================

○林学

森林および林業に関する技術および経済政策についての学問。

<技術部門>

  • 造林学
    (関連学として)  
    • 森林生態学
    • 森林環境学(森林立地学)
    • 森林植物学
    • 林木育種学 など
  • 林保護学
    • 樹病学
    • 森林動物学
    • 森林昆虫学
    • 森林動物管理学 など
  • 森林利用学
    • 森林土木学
    • 森林機械学
    • 林業生産工学
  • 砂防工学
    • 砂防土木学
    • 森林水文学(森林理水学)
    • 森林気象学 など

<経済部門>

  • 林政学
  • 森林経理学 → 技術学と経営学の中間的なもの。森林経営計画が主体。
    (関連学として) 
    • 測樹学
    • 森林航測学
    • 森林会計学 など
  • 森林経済学 など

 

 

(○林産学) → 林学から独立

森林より収穫したものを利用する技術に関係した諸部門。

  • 木材構造学
  • 木材加工学
  • 木材材質改良学
  • 木材化学
  • 林産製造学 など

===========================

こんな感じだろうか。

辞典によって多少の呼び名の違いはあろうが、大体このような分類になっているようだ。

技術学と経営学、その中間的な森林経理学。全体を見渡して計画を立てる、経理学がまとめ役って感じだ。

森林科学との違いは?

一方で、森林科学はというと、残念ながらコトバンクで調べてもヒットしない。

大学の学科名などに多く使われる言葉であり、今や林学よりもポピュラーな言葉のはずなのに、「森林科学」の信頼できる明確な定義が見つからないのは何故だろうか。

林学と森林科学は全く同じなのか。

なぜ林学という言葉が使われなくなってきているのか。

何を意図して森林科学という言葉を使うようになってきたのか。

名前を変えたことで中身は変わったのか。

 

疑問はたくさんあるし、これの答えを考えることが、現代の林学の社会的な立ち位置を考えることに繋がるような気がする。