里山学覚書

森林科の学生のつぶやき

里山の担い手は誰か?

現在、里山では資源利用の低下(「アンダーユース」という)によって生物多様性が劣化することが問題となっており、適正利用による里山再生が目指されてきた。生物多様性国家戦略においても、アンダーユースによる生物多様性の低下が「第2の危機」として取り上げられている。

里山再生において問題となるのが、活動の担い手である。今回は里山再生の担い手について考えてみる。

 

1990年代の里山ブームでは、市民ボランティアが注目を集めた。市民ボランティアによる里山再生の事例では、神奈川県横浜市などを筆頭として成功事例も見られる。

しかし、ボランティアに依存する事業はうまくいかないことも多く、活動の持続性に問題がある。また、近年では、ボランティアの高齢化も深刻である。そもそもボランティアは都市近郊でのみ有効であり、適応できる面積も小さいことから、全国的な放置里山問題の解決には繋がらない。大径木の伐倒が困難であることなど、技術的な問題もある。旧薪炭林のブナ科樹木の大径化に伴うナラ枯れの拡大の観点から、大径木を放置した管理には注意すべきである。

 

では、誰が担い手となるべきか。

 

僕は、里山の本来的な利用者である山村住民による農業的利用の復活こそが、本当の意味での里山再生を可能にすると思う。

キャンプ場と契約した薪炭の生産や、高付加価値の山地酪農、椎茸・ホダ木の販売ルートの拡大、堆肥の生産、文化財のための屋根葺き用カヤの生産、街ぐるみでのジビエ利用の推進、サクラ・紅葉の名所づくりなど、従来の里山利用形態から現在のニーズに合わせた里山利用形態への転換を模索することが必要だと思う。

そのためには、若者の移住や新規事業者の参入が必要不可欠だと考える。

 

また、里山は奥山と山村の中間に位置し、自然と人とのバッファーゾーンとしての役割も持つ。そのため、里山再生は野生動物被害の低減にもつながると考えられる。もちろん、野生鳥獣管理にはハンターの確保も必要である。

このように、里地里山という景観スケールで問題を捉え、産業として成り立った上で全体として調和した里山景観を作ることを目標にすべきであると考える。

それを行うのには個人では力不足で、自治体が里山利用を推進していくべきであると考える。