里山学覚書

森林科の学生の自学メモ

昆虫標本のためのピンセットの選び方

ピンセットは標本作成において非常に重要な役割を果たします。

とくに2,3ミリの昆虫だと、普通に売ってるピンセットだと手が出ないので、数千円出してちょっといいやつを買い、先端は自分で調整しましょう。

紙やすりなどを使ってピンセットの先端を細くしたり、バリをとったりすることを「ピンセットを研ぐ」と言います。ミズギワゴミムシ類などの数ミリの昆虫の展足や解剖は、よく研いだピンセットでないとできません。

 

ピンセットの研ぎ方は長嶋聖大さんのピンセットサロンに詳しく載っています↓。よく研いだピンセットは、落としたりすると簡単に足に刺さるのでご注意ください。
「ピンセットの研ぎ方」講座テキストPDF公開 - ピンセットサロン

 

私は、ピンセットサロンで紹介されていた「KFI K-3GG」を研いで使っていますが、このピンセットは腰が絶妙に弱くて使いやすいので重宝しています。価格もお手頃なのでおすすめです。ちなみに紹介されていた記事はこちら。
【ピンこれ】KFI K-3GG SUS304 みんなが愛する費用対効果抜群のピンセット

WebSpecimanagerとGoogleデータポータルで標本データベースを作ろう!

Google Data Portalって何?

以前の記事で紹介したWebSpecimanagerはデータを登録・管理するのにはとても優れたシステムであるが、残念ながら得られたデータをグラフや地図の形で出力して可視化する機能はほとんど持っていない。そこで、その欠点を埋め、標本データベースの真価を引き出すのに有用なサービスが「Google データポータル」だ。

*データポータルは2023年現在、Looker Studioに名称が変更されています。

 


Googleデータポータルは、Googleアカウントがあれば誰でも無料で利用することができるサービスである。

 

My SQLなどのデータベースや、CSVファイル、Googleスブレットシートなどを「データソース」として接続したあと、そのデータをもとに「レポート」を作成する。レポートには表・グラフ・地図・検索窓などを自由に追加することができる。このレポート作成の自由度の高さがGoogle Data Portalの良いところだろう。

 

データソースを別に登録してあるため、データ更新がレポートに自動で反映されるのも便利である。


また、共有が容易な点もGoogleデータポータルの大きな特徴だ。リンクの作成やユーザーの招待によって、採集(研究)仲間と標本データを共有または、公開することができる。

注:データの公開は生息地を公開することでもあり、マニアの採集圧を高めてしまう危険性がある。そのため、希少種の採集地情報は都道府県レベルまでにし、且つ経緯度情報を小数点以下2〜3桁にしておくことなどにより、生息地をぼやかす必要がある。共有した場合も漏洩の可能性がつきまとう。このようなことから、標本データの公開・共有には慎重になるべきである。


こうした機能のおかげで、WebSpecimanagerとGoogle Data Portalを併用すれば、膨大な標本データの価値を最大限に引き出すことができるのである。

 

Googleスプレッドシートからレポートを作成してみる

ここでは、誰でも簡単に利用できるGoogleスプレッドシートGoogleデータポータルのデータソースに登録して、それをもとにレポートを作成する方法を解説する。


手順1. 標本データのダウンロード

最初に、WebSpecimanagerで、CSVをダウンロードする。検索条件にあったデータだけがダウンロードされるので、全てのデータが必要な場合は、検索をかけていないか注意する。

 

手順2. スプレッドシートCSVをインポート

次に、ダウンロードしたCSVGoogleスプレッドシートに貼り付ける。新しいスプレッドシートを作成し、ファイル>>インポート>>アップロード、からCSVファイルを選択し、インポートする。

 

手順3. データソースの作成


Google データポータルで、作成ボタンから「データソース」を選択。

 

Googleスプレッドシート」を選択。必要なスプレッドシートを選択して「接続」。

 

フィールドのリストが表示されるので、必要であればここからフィールドのタイプを編集する。次に「レポートを作成」を選択。

 

手順4. レポートの作成

自動で表が作成されるので、右側に表示されている「データ」編集画面から「ディメンション」(表の列のヘッダに対応)に必要な項目を足していく。設定の下の方にある「クロスフィルタリング」を有効にしておくことで、後で追加する検索窓の検索結果が表示されるようにできる。

 

グラフを追加」からグラフやGoogleマップ、スコアカード(設定次第で種数や個体数を表示できる)を追加。さらに、「コントロールを追加」から、必要なコントロール(検索窓)を設置。コントロールのうち「入力ボックス」の設定は、検索タイプを「次を含む」にしておくと使いやすい。

また、地図を表示する場合、「位置」を「Japanese-place-name」に設定し、「Sub-family」によって色分け、円の大きさは「Record-count」によって決定すると良いだろう。

 

「ページ」>>「現在のページの設定」でレポートのサイズ調整。

 

データ更新は、データソースのスプレッドシートを更新することでできる。レポートに反映されるのは、自動だと少し時間がかかる。すぐに見たい時はレポートの上に表示されている点々マーク「詳細オプション」からデータの更新が可能。



工夫して使ってみよう

以上の手順でGoogleスプレッドシートをデータソースとするレポートが作成されたはずだ。設定次第で使いやすくなると思うので色々と工夫を凝らしてほしい。

WebデータベースWebSpecimanagerで昆虫標本を管理しよう

無料で使えて、莫大な昆虫標本の情報をまとめて管理できるWebデータベースサービスがあるのをご存知でしょうか?


実は、WebSpecimanagerという無料の標本データベースサービスがあるので、ご紹介したいと思います。


WebSpecimanagerの概要

WebSpecimanagerは個人が開発したWebデータベースサービスですが、完成度はとても高いです。


本格的なRDB(リレーショナルデータベース)になっており、標本データにあらかじめ保存した調査地情報や分類情報を紐付けしていく形式をとっているため、登録作業効率が非常に良いです。

特に甲虫・蛾の分類情報に関しては、既存の目録の情報を利用しているので自分で入力する必要がありません


さらに、このデータベースからは登録した標本情報をCSV形式でダウンロードすることができるため、工夫次第でいろいろな応用が可能。


ただ、個人の運用ゆえに存続性に多少の疑問がありますが、サービスの終了に際しては利用者の標本データにおいて、必ずなんらかの救済処置をとると公言しているので安心できますね。
標本データベースを始めるにあたっては非常に使いやすいサービスなので、ぜひ多くの人に利用してほしいと思います。

関連情報

機能の詳細や開発の経緯については、開発者の藤川浩明さんによる解説が以下のブログに載っているのでご興味ある方は読んでみてください。

 

fujikawahiroaki.hatenablog.com

 

Twitter(X)はこちら↓

https://twitter.com/webspecimanager

 

最後に、このようなサービスを無料で提供していただいている開発者様、分類情報を公開していただいている方に感謝すると共に、敬意を表します。

昆虫標本ラベルのコンビニ印刷のすすめ

みなさんこんにちは。


みなさんは標本ラベルの印刷どうしていますか?


自分の場合、情報を詰め込みすぎて字が4ptくらいになっているので、家庭用のインクジェットプリンターではどうしても文字が掠れてしまうという問題がありました。


このことで長いこと悩んでいたのですが、コンビニ印刷を利用することで綺麗なプリントが可能となりましたので共有いたします。


まず、ワードの書式設定をハガキサイズに設定しラベルを作ります。


それをpdfに書き出して、コンビニ印刷のアプリでお店で印刷すれば、驚くほど綺麗なラベルが印刷されます!


家庭用インクジェットと業務用じゃ比較にならないのは当たり前ですね笑。


大したお金もかからないので近くにコンビニがある方はお試しください。

【必須アイテム】微小昆虫のための双眼実体顕微鏡の選び方と視度調節の方法

双眼実体顕微鏡の選び方

ゴミムシサイズ(大きさ1cm前後)の昆虫の研究に必須のツールが、双眼実体顕微鏡です。

双眼実体顕微鏡は、低倍率で立体的に物体を見るための顕微鏡で、肉眼だと細部が確認できないような大きさの昆虫の標本を作る際や、ゴミムシを同定する際に必要となってきます。


値段が数万円するので、初めて買うときにはハードルが高いかもしれませんが、あるのとないのとでは見える世界が全然違ってきます。ある程度のスペックのものを最初に手に入れられると良いです。


スペックに関しては、例えば7〜45倍までのものなど、低倍率から高倍率まで無段階で調節可能なものが使いやすいです。

 

小学校の理科室にあるような、倍率2段階切り替えで豆電球がついてるようなのはダメです。安いからといって購入すると後で後悔します。

 

倍率は高い方が良いように思うかもしれませんが、昆虫用には10倍前後の低倍率が使用可能なことが重要です。なぜなら、昆虫の観察(特にスケッチ)では、全体像を見たいと思うことが多いからです。

 

ゴミムシの場合は、小さいと言っても1.5cmくらいのものを扱うことも多いと思います。顕微鏡を覗いて見える範囲は、10倍で直径約2cm、45倍で直径約5mmと、思っている以上に狭いため、10倍くらいの倍率が使えないと辛いと思います。


ちなみに私は写真のホーザンの工業用のものを使っています。こちらは定価10万円程度ですが、アマゾンで6万円くらいで購入しました。有名なビクセンオリンパスニコンのもっと高いものだと数十万円するものもあるようです。

 

ヤフオクなどで中古を安く手に入れるのもいいと思います。ただ、中古の場合、保管状態が悪いとレンズにカビが生えていたりする可能性があるので、注意が必要です。

 

 

照明装置

照明については、接眼レンズにつけて使うリングライト(写真)や、ダブルアームの顕微鏡用照明装置を使います。

リングライトは視野を均一な明るさにでき、ダブルアームは立体感の強い像を得ることができると言われています。

 

表面の微細な彫刻を観察するためにはダブルアームが良いみたいです。そのままでは光が強すぎる場合はトレーシングペーパーなどで光を弱めます。

ただ、ダブルアームは高いです。

 

また、黄色っぽい光は見にくいので、白っぽい光(白色LEDとか)のものを選ぶと良いです。リングライトは比較的安価で販売されているのでおすすめです。

 

下のリングライトは私が使っているものです。調節できて使いやすいです。

視度調節の方法

顕微鏡には接眼レンズが視度調節できるようになっているものがあります。

人間の目は左右で少しずつ視力が違っているので、良好な視界を得るためには片方ずつピントを調節する必要があります。


下記の手順に従って観察を始めるときに視度調節を行うことで、どの倍率においてもピントが合った状態となり、観察しやすくなります。

 

  1. 視度調節できる方のレンズのメモリを0に合わせる。
  2.  物体に、最高倍率でピントを合わせる。
  3. そのまま最低倍率に下げる。
  4. 視度調節できない方のレンズで見ながらピントをあわせる。
  5. 視度調節できる方のレンズを回してピントを合わせる。
  6. 完成!これでどの倍率で見てもピントが合った状態で観察できます。

<参考>

www.olympus-lifescience.com

簡単!昆虫標本用ユニットボックスの作り方


微小昆虫標本を扱う際には、顕微鏡観察が必要となる場合が多いが、標本箱内の標本をいちいち取り出してみるのは結構扱いに困るものだ。


それに、標本が増えるほどにごちゃごちゃとしてきて分類の境界がわかりにくくなってしまう。


この問題を解決するために存在するのが「ユニットボックス」と呼ばれる仕切り箱である。


こいつを使えば細かい分類もスッキリ明瞭。検鏡時は、見たい分類群のボックスだけを取り出してみればいいので、扱いやすいし標本を破損するリスクも減らせるという代物だ。


しかしながら、このユニットボックス、沢山買おうとするとそこそこにお金がかかってしまう。特定の分類群を属レベルで分類したい人間には無視できない額となってしまう。


ということで、今回はユニットボックスを安〜く自作してしまおうという記事である。


市販品より作りは弱々しいが、機能的には必要十分だ。
 

作り方

 
まずは型紙を作るところから。
 
サイズは今後ペプなし標本箱を購入することを考慮して、市販品と同サイズに設定。
Inkscape で細い線を引いて型紙を製作した。
 
以下に私が作成した型紙を添付するので、個人的利用にご自由にどうぞ。商用利用は不可。

ユニットボックスL 型紙

あとは簡単で、これを250 g/m^2程度の厚紙に印刷(A4,倍率100%←ココ大事)し組み立て、100均のカラーボード(厚さ5mmくらい)またはペプ板を底面に貼り付けて完成である。接着には両面テープを使用した。


ペプなし標本箱を持っていない場合には、ちょうどいい大きさのタッパーに防虫剤・乾燥剤と共に入れればOK。

 

どうぞお試しあれ。

改善案などあればコメント欄にお願いします。

調子乗って隣の街まで45 キロ歩いて考えたこと

みなさん、こんちには。

ここ数日、世間では、なんとかマスとかいうキリスト教のイベントで、随分と大騒ぎしていた様でありまして、インスタのストーリーは変な光るチカチカを男女ペアで見にいっている写真で溢れておりました。

何か、そういう儀式なのでしょうか。

私は正真正銘の仏教徒なので、そういうことはよくわかりません。

ということで24日に何も予定のなかった私なのですが、どういうわけかいきなり思い立って、山を挟んで45キロほども離れた街に徒歩で行くという、アホな企画を立案・実行しました。

45キロという距離を歩くのは初めての体験だったので、今回の記事では歩きながら気づいたことについてお伝えしていこうと思います。

1日で45キロは長いか否か

「1日に45キロ歩く」と聞くと、普通の人だったら「そんな距離歩くなんて信じられない」というと思います。

では徒歩旅的観点で1日45キロは長いと言えるのでしょうか。

結論から言うと僕の主観ではありますが、野宿旅の装備で連日40キロはアホだと思います。

ネット上で徒歩旅のブログを見ると、1日に40キロくらい歩く猛者は割と見かけます。しかし、そうした人は大体ネカフェや安宿を渡り歩いています。

対して野宿スタイルの徒歩旅では、野宿装備や衣服、食料をザックに詰め込むと軽くても10キロ程度になります。10キロのザックは背負ってみると大したことないと感じますが、一日中、8時間以上も背負って歩いていると、やはり相当体力を奪うものです。

今回の歩行の場合、ザックの重さの影響が未知数だったので、普通の装備から着替え・食料を抜いて、テント・寝袋・防寒着・クッカー・小物・衣料品を持っていきましたが(7, 8キロくらいか?)、歩き終える頃には、上半身はへっちゃらでも、足がかなり痛くなっていました。

その後2日間は、足の筋肉が張りまくっていましたし、足くびの近くの筋をちょっと痛めてしまったのでかなり無茶だった様です。

ということで、野宿旅なら一日30キロくらいにしておいたほうが良さそうだ、というのが今回の結論でした。